読書日記

本は僕の宝です。

「BUTTER バター・柚木麻子」//死刑囚による獄中からのマインドコントロール

 

 

読後感想

 

若くも美しくもない女が、男たちの金と命を奪った――。
殺人×グルメが濃厚に融合した、柚木麻子の新境地にして集大成。
各紙誌で大絶賛の渾身作がついに文庫化!!

 

男たちの財産を奪い、殺害した容疑で逮捕された梶井真奈子(カジマナ)。若くも美しくもない彼女がなぜ──。週刊誌記者の町田里佳は親友の伶子の助言をもとに梶井の面会を取り付ける。フェミニストとマーガリンを嫌悪する梶井は、里佳に〈あること〉を命じる。その日以来、欲望に忠実な梶井の言動に触れるたび、里佳の内面も外見も変貌し、伶子や恋人の誠らの運命をも変えてゆく。各紙誌絶賛の社会派長編。

本作着想の根底には、世に知られた事件があったのは確かだ。しかし物語が進むにつれて、事件からも犯罪者からも遠ざかる。独立したオリジナリティーに富んだ物語が展開される。進路を定めた羅針盤こそ、「女性同士の友情と信頼」である。
山本一力(本書解説より)

 

読後感想

 

本書は2007年から2009年にかけて発生した首都圏連続不審死事件の死刑囚木島佳苗をモデルとして扱ったフィクションである

木嶋佳苗役は本書では梶井真奈子(カジマナ)

もう一人の主役は町田里香、週刊誌記者。いうなれば女性自身や週刊文春週刊新潮など大手週刊誌記者を想定していると思う。

 

町田は梶井を取材するため巣鴨拘置所で面談したいと何度も手紙を書くが何の返事もない

しばらくして事件のことは聞かないなら取材を受けても良いと梶井から返事が来る

その内容は梶井がブログに書いて実際に男性と足を運んだ高級レストラン

ここに行って感想を聞かせて欲しいと・・・

1コース数万円もかかるレストランに足を運ぶうち5K太ってしまうが肝心な事件のことは触れさせない

何度か繰り返すうち梶井の故郷に住んでいる母と妹に面会を許される

妹は姉の逮捕により離縁させられ母の元に出戻っていた

当然というえば当然だが母親は真奈美が決して殺人を犯すような教育をしたつもりはないと蹴られてしまう

家の中は掃除が行き届かず汚れていた

心のすさみがしのまま現れているようだ

帰りがけに夕食をごちそうになったが赤飯とミルクシチュー

姉の事件からして赤飯はあり得ないし、隣家に乳牛を飼っている市販のミルクシチューは解せない

2人とも姉の事件がなかったごとく暮らしていた

 

町田は梶井の事件を追っていくうち被害者の特徴を知る

女性と付き合ったことのない男性、幼児性愛者や妻を亡くした老人

この中の心の隙間に梶井は侵入しデートや同棲をしながら金品を巻き上げていく

死亡は自殺や事故に見せかけるなど巧妙な手口で自分が殺害したとは決して吐かない

 

梶井は拘置所に入りながら町田や町田の友人伶子も懐に取り入りコントロールしていく

このあたりは梶井の方が一段上を行く感じ

 

前に書いた梶井に勧められ恵比寿の高級レストランでの食レポが読んでいて目の前に迫るような書きっぷりは著者の力だろう

さらに同じように薦められ入園した個人クッキングスクールでの料理描写が何ともすばらしい

ついでに書けば署名のとおりバターをふんだんに使った料理が多い

町田里香はこれらかた元々スレンダーな体質であったが10キロも太ってしまう

 

僕はこんな食事や料理も経験がないがこれを読んだだけで本書を読んだ甲斐があった

 

 

梶井が通っていたクッキングスクールで大きなトラブルがあった

園長が次回七面鳥調理10人分程度を一気に作ると行ったら梶井が暴れ出した

男女一対一の場での料理を望んでいただけに10人分も作るとは自分にはあり得ないとこからだった

 

とにかく梶井が牢獄にいながら人間をコントロールしひとを欺く姿は一読の価値がある

町田との接見を辞めたころに「梶井真奈美の告白、真実はこれだ!」とスクープ記事を書いた独立系記者と獄中結婚したことも奇異に思った

 

署名の「BUTTER」のように内容の濃い小説だった

この本の英訳版が英国ですごい売れ行きだそうだ

 

だいぶ省いて書いたが梶井真奈子は死刑囚だが、これまでの日本の慣例から見たら死刑執行は至らず一生獄中で過ごすことになるだろう

自らの犯行の反省もせず・・・

 

--------------

以下のバナーをクリックしてもらえると更新の励みになり嬉しいです

 

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
にほんブログ村

*イラストはフリー素材を使用しています

*クリックありがとうございます

 

 

 

--------------